04 (香川県歯科医学会)患者さんとの信頼関係を形成するために (簡単な暫間補綴物の製作法について)

1)患者さんとの信頼関係を形成するために

(簡単な暫間補綴物の製作法について)

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3)はじめに

患者さんとの信頼関係を形成するためには、自費治療はもちろん保険治療といえども、補綴物を製作、改造あるいは修理する時には、必ず暫間補綴物を装着しておく必要性があるが、少数歯の暫間補綴物と違い、全顎での場合には咬合関係の維持や審美性の回復などの目的を果たすために、その暫間補綴物製作にはかなりの時間と費用を要する事が多い。

4)

・しかも歯科医療と歯科技工の分業化が進み、外注による補綴物製作が主流となりつつある中では、患者さんが機能的にも審美的にも満足する暫間補綴物をスピーディーかつ低コスト、なおかつシンプルな制作法で提供する事が歯科技工サイドには求められています。

・そこで今回、演者はバキュームアダプターを利用した、全顎にわたる暫間補綴物製作法を考案し、製作、装着していただき、時間的にも経済的にも比較的容易に良好な結果を得ているので、その製作法と使用例について報告します。

5)利点

この方法での利点は

チェアサイド側の負担が少ない事

これは製作のためには現状の印象とバイトを取るだけでよいことや、セットが楽である事などです。

次に全顎であればブリッジ、パーシャルデンチャー、総義歯にかかわらず製作できる事。

また、ある程度の審美性、咬合の改善ができる事。

そして経済的に早くできる事などがあります。

6)欠点?

次に欠点ですが現実にはその使い方を工夫することで問題となってはいません。

まず、レジンプレートの厚み分大きくなる点ですが、結果的に、形成量が少なくても確実に装着できることになります、又チェアサイドでの調整後にはほとんど問題となっていません。

次に劇的な咬合、審美性の改善はできない事は、代わりに確実に装着できる事になります、必要があれば、この暫間補綴物の装着後、形成、咬合が整ってから、理想的な暫間補綴物を作るので、患者さんにとって違いが良くわかり、全顎治療への理解を得やすい事となっています。

7)製作過程の概要

おおまかな製作過程の概要について説明します

チェアサイドで全顎治療になると決まったら

まず、印象採得を行います、そして咬合採得をしていただきます。

この後、ラボサイドと治療の手順や支台歯となる歯の見込みなどの

打合せをします。

次にラボサイドで治療内容の打合せに応じて作業用模型の修正を行います。

そしてアクリルプレートの圧接を行います。

8)

次にアクリルプレートのトリミングを行います

そして変形防止のため咬合面石膏コアの作製を行います

そしてアクリルプレート内面へ即時重合レジンの筆積みを行います

最後に模型上での試適および調整を行います。

ここまででラボサイドでの製作は終了します。

9)

チェアサイドにおいて次回来院時または、治療上都合の良い時にSETします。

まず、口腔内での試適を行い不要な部分の干渉が無いか確認します

次に維持装置部の調整を行います

続いて床粘膜面部のテイッシューコンディショナーによるリベースを行います

最後に若干の咬合調整を行い終了します。

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それでは、実際の症例を見ながら説明をしていきます。以下のスライドを参照下さい。

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この症例は、レジン床にて完成させたコーヌス義歯を患者の要望により急遽金属床義歯に置換えたものです。

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そのチェアサイドからいただいた模型です。

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強度等を考慮して修正し、プレス用の模型を調整した状態です。

スライドお願いします。

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使用したパキュームアダプターです。

100ボルトでも使えるのですが、よりパワーをあげるため昇圧トランスを使用して120ボルトにして使っています。

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アクリルレジンプレートを圧接した所です。

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石膏で咬合面コアをとっている所です。

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模型から取外したアクリルレジンプレートです。

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歯冠色の即時重合レジンを筆済みしたところです。

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歯肉色の即時重合レジンを筆済みしたところです。

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ラボサイドにおいて完成した状態です、

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チェアサイドにてコーヌス部分を即時重合レジンにて調整後、粘膜部分をティッシュコンディショナーにて裏装した状態です。

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完成した暫間補綴物の咬合面観です。

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同じく正面観です。

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改造の終わった、金属床義歯です。

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また、金属に置き換えた義歯は機能印象されたこととあいまって、非常に適合の良いものが完成しました、又改造の期間中も、暫間補綴物を入れておくことで患者さんに不自由をかけずに済みました。

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この症例は、下顎前歯部を除く全ての歯を補綴した時のものです。

この場合、下顎については、全顎での補綴とはならないため、上顎の暫間補綴物のみプレスして製作しました、通法どおりに作るのが下顎の小さい暫間補綴物だけで済むのでスピーディに製作できました。

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まず、上のスライドのように模型を通常どおり咬合器に装着します。

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全顎での補綴となる上顎模型を修正し、アクリルプレートを圧接したところです。

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アクリルプレートのトリミングを行い、咬合器に戻した後、下顎とほぼ均等に接触するまで咬合調整を行った後、下顎の暫間補綴を通法どおりに作成したところです。

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ラボサイドにおいて完成した上顎の暫間補綴物の咬合面観です。

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この時に作った上下顎の暫間補綴物です。

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これは、別の患者さんのものですが、上のスライドは、治療前の状態です。

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本法により置き換えられた、状態です。

プレスにより一回り大きくなっているといっても、この程度であれば患者さんは納得していただけます。特に、この症例のように義歯部分があったり歯の動揺があったようなケースではこの状態で、以前より良くかめるようになったなどという評価さえいただけます。

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10年ほど経過したコーヌスデンチャーが破折した時の修理時の症例です。

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同様にして製作したラボサイドで完成した状態です。

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同じくその粘膜面観です。

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チェアサイドにて調整の終わった粘膜面観です。

コーヌス部分、残存歯の部分には、即時重合レジンそのほかの部分にティッシュコンディショナーが入っているのがお分かりいただけると思います。

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実際にこの方法でSETした患者さんの口腔内での状態です。

この状態で、暫間義歯として充分に機能します。

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保険で上顎前歯部をブリッジで補綴し、臼歯部のデンチャーもやりかえることとなった時の模型です。

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作成したプレスによる暫間補綴物です。

チェアサイドから、依頼があった翌日にはすでに完成していましたので、チェアサイドでは、都合の良い時期を選んでスムーズに暫間義歯へと置き換えることができました。

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まずレジン床で完成後、粘膜調整を行い、金属床に置き換えるための期間中使用する総義歯の暫間補綴です。

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完成した金属床義歯です。

簡単に暫間補綴物が作成できるようになった現在では、いきなり金属床を作製するようなことはしないで、レジン床にて完成後、粘膜調整や、咬合調整を繰り返し、これで大丈夫となった時点でリベースして金属床義歯へ置き換えることが多くなっています。この方法だと金属床のSET時にはほとんど調整の必要がありません。

45)終わりに

終わりに

全顎に渡る治療、及び補綴物の改造、製作時にバキュームプレスを使った治療装置としての暫間補綴物を使用することにより、チェアサイドにおける、時間的経済的負担が軽減され、効率的な治療が行えるようになったことから結果的に患者さんにより満足していただくことが出来るようになった。

今後症例数を増やし、さらに検討を加えていきたいと思います。

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